世界は回ってるんだな、と思う。
こんなにも心の中がぐちゃぐちゃで、大嵐が来た後みたいに混乱しているのに太陽は規則的に沈むし昇る。気付かない内に日付が変わる。

気怠い土曜日の午前8時、大きな伸びをした私の視界に時計の横に掛かったカレンダーが滑り込んできた。

私の大好きなバンドのボーカルの中村さんが、ピンク色で象られた三月を意味する英単語を脇に置きにっこり微笑んでいる。かっこいい。でも、スクアーロさんの方が格好いい。

そんな事を無意識で考えてしまう、私は怖い。
でもそうして自分に恐怖感を覚える間にも、私の目は意志に反するように「13」の文字を捉えてしまっていた。13日。明日、明後日、明明後日。

そうか、もうあと3日でスクアーロさんの誕生日なのか。
自然と溜め息が漏れて、私の部屋に寂しそうに浮かんでゆく。その私にしては悩ましい吐息が向かう先は明らかだった。

銀色の、まるで彼の髪のような眩しい色に包装されたプレゼント、だ。勿論それはスクアーロさんへのもの。彼の誕生日を祝う為に衝動的に購入したもの。

でも、迷っていた。
スクアーロさんにこれを渡してしまったら、その勢いで言わなくていい気持ちまでし吐き出してしまいそうで怖いからだ。

きっと、誕生日なんて素知らぬ顔で何時もより良いお菓子を出してやるのが一番の得策なのだろう。幸か不幸か、13日は彼が家に来る曜日だ。
けれどその反面、折角プレゼントを用意したのにそれを渡さず一人うじうじしているのが嫌だと、そう思う自分もいた。

プレゼントをあげたいし、喜んで欲しい笑顔も見たい思いも伝えたいのだ、本当は。

でも思う度、叶わないと分かっているのに、何故わざわざ砕けにゆくのだろうかと如何にも根暗人間だなあという思考が私の脳裏を過ぎる。過ぎるだけならまだしも、通り過ぎる事なくはべりついた儘になる時もあったりする。だからどうしても踏み切れない訳だ、どうしても。


ぐるぐる、ぐるぐる。
捻れ拗れになりながらも頭をフル回転させていたら、まあ当たり前かもしれないけれど次第に気持ち悪くなってきた。うわ嫌だ、知恵熱出しそう。でも熱を出したら、看病しに来てくれるだろうか。

そんな馬鹿げた乙女思考は一旦部屋の隅に寄せて、取り敢えず二度寝しようとベッドにごろんと寝そべる。

白い天井には中学時代に馬鹿みたいにハマっていたアイドルのポスターを貼っていた為、今もその痕がしっかりと残っている。今やそれは黒歴史と化していて、タイムスリップできたならまず中学時代の自分を殴ってこようと決めている位だ。


スクアーロさんへの想いも、年を経ればだんだん風化していくんだろうか。
あのアイドルみたいに、馬鹿みたいに盲目的だったねと自分で自分を笑えるようになるのだろうか。

幾ら考えても答えは出てこなかったし、出そうとも思わなかった。ただぼんやりと思う、私はスクアーロさんを忘れる事は出来ないだろうと。

彼はきっと、いや絶対、タイミングの悪い時にまた私の心へと侵入してくるに違いない。そして私はそれにまんまと嵌るんだろう。


その証拠とでも言うように、部屋に携帯の振動音が響いた。ディスプレイを覗くと新着メール一件の文字と、右上に表示された8時20分。

自然に指がメールボックスを開いて、目は差出人を確認していた。スクアーロさん。8時19分。ああ、やっぱり私は彼を忘れられないんだろう。

銀色の包みを見て、世界は自転しているのだなあと改めて実感した気がした。




彼女は自分の迷う気持ちと、地球の自転とを重ねて考えた訳です。分かりにくくて申し訳ない
(20120320)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -