「彼氏ぃ!?リンダ彼氏出来たの?」

「あははは!マジでやばいねそれ」

「それはまだマシだよ、私なんて今月入ってからセックスしてないよ」

「違う違う!私が先週まで生理だったからさー」

「分かる!生理の時ってめっちゃ乳張るよね」

「マジで?リンダ尊敬するわ!」

「ん?幻ちゃんが真っ赤だ…」

「いや彼氏がなんか…ごめん切るねばいばーい」



「…幻騎士さーん?」
「……」
「なんで真っ赤なのあなたは」
「……」
「私もう乳張ってないよー?」
「……」
「うぶだなぁ、」
「そ、そんな事はない」



長時間の通話でほんのり温かくなった携帯をパタンと閉じて、そのまま幻騎士の方へと目を向ければばっちり合う視線同士。

だったんだけれど、何故か音速を超えるかってくらいの速さで逸らされてしまった。


…なんで。何故に。
そんな恥ずかしい事言ったっけ私。
まあ彼がこういう…猥談?とまでは言わないけれど、ちょっと性関連の話が苦手だっていうのは百も承知だけど。

でも仮にもキスだってセックスだってしてる仲なのに、こうやって自分との温度差を見せつけられると少し悲しい訳で。

我が儘なのは分かっているものの、彼に詰め寄らずにはいられなかった。私って嫌な女。
私が男だったら私みたいな女絶対無理、十万貰っても無理。


なのに幻騎士はおかしいの。
だって、だってね。こんな最悪な私なのに、「お前が悪い訳じゃないんだ」って言って優しく髪を梳いてくれるんだから。

女の子は優しくされるのに弱いって知らないならまだしも、知っててやってるんだったら完璧だ。ますます私に不釣り合いに思えてくる。
ああ何でか、泣きそう。



「なまえ…?何故泣くんだ」
「ばかぁ、ばかばか」
「…悪い」



ぽろぽろ。
思いは留まる事を知らず、涙となって排出されていく。

嗚咽混じりの私の背中をゆっくりと撫でてくれる幻騎士の優しさが骨身に染みていく感覚が、私をもっと不安にしていく。でも、それと同時に安心感をもたらしてくれてもいた。

この人は私にずっと付いていてくれる。こんな駄目な女を何十億という女性の中から選んでくれている。

ならば私は何を持ってそれに応えたらいいんだろう。
涙で霞む視界の中、彼を捉えたら答えはすぐに見つかった。


取り敢えず私は、幻騎士にしょっぱいキスをした。



∴ちょっと鈍感が効いてる幻騎士



(20120101)



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