「見てこれ」

彼に差し出すはおみくじ。
昨日友達と初詣に行ったときにノリで引いたおみくじ。真っ赤なコートの右ポケットに突っ込んだ所為でくっしゃくしゃのおみくじ。



「…小吉だな」
「フォローどうぞフォロ方さん」
「…あー、どんまい」


全然駄目。フォロ方失格センスなし。

期待外れの土方の言葉に罵詈雑言を浴びせると、彼は黙って制服の胸ポケットから薄い紙っぺらを出してきた。それは私のと同じような状態で丸まったおみくじらしき長方形の紙。



「…これ読んでみろ」
「…すえきち」
「小吉と末吉の違い分かるか?」
「正直あんまわかんない」
「小吉のがちょっといい」
「あー…、どんまい」



まさか私がフォローをする事になろうとは思わなかったけれどまあいい。仕方無い。

取り敢えず慰めになるかは定かでないけれど、「大吉取っても緊張するだけだよねー」なんて苦しい言い訳をしてみる。
苦しいにも程がある。が、今はそんな事言ってもどうにもならないし許して欲しい。



「お前も俺も運ねーなァ」
「でもマイナスとマイナスは掛ければプラスだよ。私と土方でいればプラス…たぶん」
「馬鹿だなマイナス同士は足してもマイナスなんだよ」
「足さねーよ掛けんだよV字」
「俺らじゃ無理だろ掛ける要素ねーよ」



いいから掛けるんだよ。
ちょっと意地になって土方を肘で小突くと、面倒臭い奴だなみたいな顔をされた。ショック。

それでも今更引き下がれない私は、兎に角私達掛けたらいい感じだからと必死に言葉を紡ぐ。誰に強情だと言われても反論できないだろう。



「掛ける事にこだわりすぎだろ」
「仕方無いじゃん」
「はあ?」
「土方といるのがマイナスとかやだわ。無理無理、ぺっぺ」
「意味分かんねー」


吐き捨てるようにそう言ったくせにどこか嬉しげな土方。いや、嬉しそうなのが幻覚じゃない事を願いたい。


ここを出ようか。
別段反対する理由もなく、部屋を出ることにした。ふと、土方が例のおみくじを置いていってる事に気付いた私。…もう、仕方無い奴だな。



「おい、行くぞ?」
「あー待って土方」


差し出された大きな手に有り難くすがりついた私。

部屋に置いてけぼりをくらう事になった土方のおみくじは今さっき私のそれと方結びにしておいたから、これで今年の運気はプラスになりそうだ。



∴存外照れ隠しは下手な土方



(20120101)



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -