風影になってからの我愛羅は忙しい。

私に構ってくれる時間も少なくなったし、一日姿を見ない日だってざらにある。そんな我愛羅は嫌い。

あとは風影様。
そう呼ぶのも嫌いだったりする。
だって風影さまって、なんだか我愛羅が遠くにいってしまうような響きがあるから。だから嫌。



出勤する為にいつもの道を歩いていたら、遠くに赤い髪の我愛羅が見えた。

でも私の近くに彼の事を格好いいだとかこっち見てほしいだとか苛々する事を口にするくのいち達がいたから、わざと大股で我愛羅に近付いていく。後ろから聞こえるヒソヒソ話は聞かぬふり。

だいぶ近寄ったところで我愛羅が私に気付いてくれたらしく、小さく私の名前を呼んだ。ああ我愛羅は今日も綺麗だ。


「風影さま、お早うございます」


笑顔でそう言って我愛羅との距離を詰める。
すると予想通り彼はいつもの無表情を少しだけ歪ませて、私の目を何かを訴えるように見詰めてきた。

「なぜ名前で呼んでくれない」俺の事が嫌いになったのか、だって。
まさかそんな訳あるはずもないのに、我愛羅は馬鹿ね。
まあその顔が見たくて、その言葉が聞きたくてわざとやった私が一番馬鹿かもしれないけれど。


私は不安に顔を歪ませる我愛羅を何時ものようにぎゅうっと抱きしめた。赤くて柔らかい髪が私の肌を擽るのが心地よくて仕方がない。


「我愛羅、おはよう」


耳元でそう言えば、くぐもったおはようが返ってくる。きっと今我愛羅の顔は赤いんだろう。

抱き付いている為彼からは私の顔が見られないので、目の前にいるギャーギャー煩いくのいち達に心を込めてあっかんべーをしてやった。

彼女達の屈辱に歪む表情を笑顔で去なして、私の一日は始まる。
ああ今日も、いい日になりそうね。



∴詰まるところ寂しがり我愛羅



(20120101)



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