うちの高校の保険医はヤバい。

何がやばいって、顔と体と色気とその他諸々。とにかく女性を魅了する要素がてんこ盛りなのだ。

だけど、私にはそんな事関係ない。
何故なら私は彼、高杉先生はとんでも無い鬼畜野郎だと知っているからだ。知ってるし、嫌いだ。
でも、でも何故か私は、私の足は毎日のように保健室へと向かってしまう。

全く、高杉の魔力は恐ろしい。
それは保健室に通い始めてわずか三日で思い知った事実だった。



薬品の鼻を突くような匂いが充満する保健室に入室した私の耳に飛び込んできた音。それは明らかに女性の喘ぎ声だった。

ああまたかこの色男は。
授業中に高杉が気に入った女生徒を連れ込んでセックスをしているのは慣れっこなので、奥のベッドで絡まっているんであろう二人に気付かれないようにソファに座って本棚にあるお気に入りの漫画を手に取った。

事情中は鍵を掛けろと何度言っても聞いてくれない高杉に腹をたてつつも読書に耽る私は、そうとうメンタルが強いんだと思う。


やっと行為が終わり着替えたらしい可愛い女子が、ひょっこりとカーテンから出てきたので読みかけの漫画をパタンと閉じる。

無論その子は驚いて小さく悲鳴をあげてから突風のように保健室を出て行ったけれど、後から気怠げに登場した高杉は違った。



「オウ、お前また来たのかよ」
「先生こそまた校内でお楽しみですか」
「お前も相手してやろうか?」
「全力で結構です」
「あァ、処女か」
「燃えろ変態保険医」



強気に毒を吐いたら、お返しと言わんばかりにデコピンを食らう羽目になってしまった。今ここで急所を蹴り上げたら怒られるだろうか。

そんな気の抜けた事を考えつつも伸びをする。保健室って不思議なことに、すごく眠くなるんだ。



「オイ処女、」
「……」
「お前だよバージン女」
「うわっ!?」



いい気分で微睡んでいたらいきなり高杉に頬を抓られた。
しかも何かとっても不快な呼び名で呼ばれた気がするような…。ぼーっとしなければよかった。



「暴力反対訴えるぞ」
「担任に突き出すぞサボリ魔」
「職権乱用め」


苦々しく呟いたら、高杉がニヤリと笑んだ。

なに、なに気持ち悪い。
さすがにその正直な感想は口に出さなかったものの、態度に出やすい私の気持ちは高杉に易々と汲み取られてしまったようで。

何故かグリグリとこめかみを押される攻撃を受ける事となった。というか何で私だけこんな痛い思いをしなくちゃなんないの。



「悪ぃな、職権乱用させてもらう」
「は?」


戸惑い顔の私に、何故か横暴保険医のキスが降ってきやがった。

ああこれって、高杉の色気に負けた私がいけないのか。



∴エロスの追求に余念のない高杉



(20120104)



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