ああ、もう駄目。
ここで私は終わりだ。
今日は恭平といれてすごく楽しかったよ、私。一生忘れない。

でもごめんなさい、もう無理なの。


「足疲れたああぁ、」

もう動けない、いや動いてやらない。
恭平の腕に思いっきり体重をかけるも、ずるずる引っ張られて靴の踵が磨り減りそうだから止めた。



「疲れた足がもう壊れた」
「まだ五時なんスけど」
「恭平は何時まででも走れるさ現役だもん。若いし」
「なまえサンと一つしか変わんないス」



プロサッカー選手が年を話題に出すんじゃないよみっともない。
そうピシャリと跳ね除ければ、恭平はまるで幼稚園のように唇を尖らせて「でもぉ」と唸った。

私と恭平は高校時代の先輩後輩の間柄で、会話からも分かるように私が一学年上だ。そして確か高三の頃から付き合っている。途中何度か大きな喧嘩もしたけれど、思えば随分と長い付き合いになる。


そんな恭平と今日は朝から遊園地デート。
折角の久々のオフなのだからどこか遊びに行くっていうのは良いと思うんだけれど、でも私はプロサッカー選手のスタミナを甘くみていた。

走り回って、(私は走って連れ回されて)、はしゃいでもまだまだこの余裕っぷり。相反して私はぐったりだ。




「てかさ、恭平明日練習でしょ?」


少しでも寛げる乗り物をとお願いして選んだ観覧車の中、まだ四分の一も進んでいないところでそう聞いてみた。
間髪入れずにこくこくと頷く恭平がちょっと申し訳無さそうな顔をしていてきゅんとくる自分がいる。

外には赤い夕焼けに照らされた煌びやかな景色。
この上なくロマンチックな雰囲気なのに、そんなしょぼくれないでよ。
可愛くて直視できなくなってしまいそうな私はおかしいんだろうか。



「練習じゃあしょうがないか」
「スンマセン俺休めないし」
「いや休んじゃ駄目でしょ」
「でも…」
「わかった、じゃあ明日練習見に行くね」



言うや否や、マジで?と顔を輝かせる恭平。
どうやら練習を見に来てもらえるのが余程嬉しいと見えて、今さっきとは打って変わってじゃれつく子犬のようになっている。捨て犬だったら確実にこのまま連れて帰るのに。


「じゃーさ!練習終わった足でご飯しましょうよ!」


恭平が嬉しそうに提案した頃には、もう観覧車もてっぺん近くまできていた。

彼の笑顔のおかげか足の疲れもすっかり取れた私は、恭平の可愛らしさにやられて彼にがばっと抱き付く。


今日も明日も来年も再来年も。
ずっとずっと、一緒にいたいよ。



∴すべてが子供体質世良


(20120104)



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