「「あっ、」」
「「すみません」」


自販機でサイダーを買おうと伸ばした手が、誰かの大きな手とクラッシュした。タイミングが悪いにも程がある。しかも台詞丸かぶりって。

手がぶつかった事よりハモった事に対して驚いた私。
どうやらそれは相手も同じだったらしく、バッと目線を頭上へと巡らせたらばっちり目があった。

私より断然背の高い彼は、この正に恋愛映画の如し状況を見てか腕を後頭部に置いて苦笑いしている。



「ハハッ、金入れてねーのにボタン押しちった」


…あれ?
てっきり苦笑いは私に向けてのすみませんのオーラからきているのかと思っていたけれど違うらしい。それよりお金入れ忘れって何。
ちょっと呆れたけどそれじゃあ済まされなかった。

お財布を取り出そうとした彼は何かに気付いたように言ったのだ。

そういや今日財布家に忘れてきたんだった、と。

のうのうと口にされた言葉に驚く私を余所に、爽やかなその(野球のユニフォーム着てるからたぶん)少年は少し照れくさそうに私を見て笑むだけだった。


でも私は何故かその笑顔に、母性辺りの本能を刺激されたようで。
気付けば私の指は大急ぎで二枚目の硬貨を入れてサイダーのボタンを押し、さらには少年の手にそれを一本押し付けていた。

悪いからと言って返してこようとする彼を軽くあしらって避け続けていると、観念したらしい少年が空いているベンチへ座った。

隣に座るのも気が咎めるので遠巻きに見ながら立っていると、少年からおいでおいでと身振りで伝えられたので大人しくそのベンチへと腰を下ろす私。



「悪い、サンキューな」
「こちらこそお節介でごめんね」
「いや全然そんな事ねーし」


屈託のない笑顔で笑う少年は私をちらりと見やった後、いくつなのかと尋ねてくる。
女の子にそんな質問しちゃ駄目じゃないと誤魔化すのも一つの手だけれど、別に知られてどうこうなる年齢でもないと判断して素直に答えることにした。



「18だよ?君は?」
「マジで?俺14だぜ…いや、です」
「敬語なんていいよ、背高いねぇ」



中二ということに驚かないといったら嘘になるけれど、それ以上に自分の声が上擦りキャバクラのキャッチの女性みたいな事を言ってしまった事に驚いた。
思えば彼と目が合った瞬間に、なんだか背筋に電流が走った気がしなくもない。

それはこの少年もどうやら一緒らしく、暫くじっと見詰められた。頬が火照る。


「「あの、名前は?」」



∴天然タラシが理想的な山本



(20120103)



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