フランというのは謎の人間だ。
何時も風変わりな蛙の被り物を被っているし、誕生日や出生もよく分からないし、幻術使いだし。

そして何故か私は、そんな謎だらけの彼に驚くくらいに懐かれていた。

まあ私は別に構わないけれど。べたべた。何たって、そんな効果音が付くほどに甘えてくるフランは可愛くて可愛くて仕方ないからだ。

以前生意気にベルに噛みついている彼を軽く叱ってやったら、あの毒舌君がしゅんと肩を窄ませてうなだれたのをよく覚えている。あの時だろうか、私がフランに対して、母性に近い感情を抱くようになったのは。

どんなに嫌な事があって顰めっ面になっていても、私が撫でると笑顔になるフラン。先輩先輩と甘えてくる、たまにからかうつもりで冷たく当たると涙目になるところも凄く可愛い。ほんと可愛くて仕方ない、私の後輩。


コンコンと、闇夜のカーテンに包まれた部屋にノックの音が響いた。
今日も来たのか、全く仕方無い子。そう思いながらも頬を緩めてしまう私は、もしかしたら彼の幻術にかかっているのかもしれない。


「フランなら入っていーよー」
「じゃー失礼しますー」
「どした?」
「先輩ー、一緒に寝てもいいですかー」
「しょうがないなあ、可愛いんだから」
「ありがとうございますー」


のそのそとベッドに潜り込んでくるフランの翡翠色の髪が、真っ暗な寝室には少し眩しい。思わず目を細めてしまう。その反射材のような頭に手を伸ばして撫でてやったら、心地よさそうに喉を鳴らしたから私はもっと目を細める羽目になった。


「可愛いー、猫みたい」
「先輩の飼い猫なら喜んでー」
「いいね、緑の猫ちゃん」


蛙だけどフランにはぴったり。
その言葉はごくんと飲み込んで、横で縮こまるフラン後ろ首に手を添える。今日もよく眠れそうだ。


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