最初、エドガーが何を言ったのか理解する事が出来なかった。



…婚約者。エドガーの言ったその言葉だけが何度も頭の中でガンガン響いてる。



フィディオを見れば、彼は酷く表情を歪めていた。どうしてそんな顔するの?



「…そうだったんだ。じゃあ二人とも、ごゆっくり」



フィディオのその声が言葉が表情が胸にぐさぐさと躊躇なく刺さる。

待って、違うの、フィディオ!言葉にする事もままならないくらい私は茫然としてボールを手に走り去る彼を追いかけられない。



乾いた音が、私とエドガーの間に響き渡る。我に返った瞬間、私は手を押さえつけた。

けれど言葉まで止める事は出来ない。涙も何故だかわからないけれどぼろぼろこぼれていった。



「どうしてあんな事っ、何で言ったのよバカぁ…っ!!」



「追いかけるなら今のうちだ。…見ているこちらがもどかしくてね、君達の微妙な距離感が」



このままここに居続けるのならば正式に婚約者として承諾した事にしても構わないが。

そんな事を言うエドガーは普通に笑っていた。もしかして、私に平手打ち食らうの覚悟したうえで?



「…最初からこうするつもりだったのね、エドガー」



「さぁ、それはどうだろうか?」



私の背中を軽く押したエドガーはフィディオを追いかけてやれ、と一言。エドガーのバカと怒鳴りつけた私はすぐに走り出した。



「全く…他人をそんな役に回さないでくれ、名前。…半分は本気のつもりだったんだがな」



エドガーが誰も残っていないグラウンドでそう呟いた言葉は私の耳には届かなかった。