今までの旅の経緯を今更ながらジェイドから聞いた。一度は止めた障気がまた復活を始めた…と。預言通り破滅の道を選び新たな世界を作り出そうとする者、そして預言を覆し、今の外郭大地で生きる事を望む者。両者の信念がぶつかり合い、衝突し、世界を蝕んでいる。ルーク達は後者であるそうだ。

「復活した障気を消すには一万人分の第七音譜術士が必要になります。…ルークはその中枢になろうとしている」

「ローレライの鍵…その能力を利用して、障気を消そうとしてる、ということですか?」

「ルークは自分が犠牲になる事を選んだ。被験者であるアッシュを残し、アッシュにローレライを開放させる為に。…友人としては、止めたいと思ったんですがね」

珍しく、悲しみを露わにするジェイドからその悲痛さが痛いほどに伝わってきた。それと共に私の中である決心が固まろうとしている。私もルークの手伝いを出来ないか、と。

私が存在している事がもし、ジェイドにとって苦痛になるというのなら。そんな親不幸、私はしたくない。生みの親を傷つける事はしたくない。どんな過去があろうとも私にとってジェイドは親だ。その事実に変わりはない。

「一万人分の第七音譜術士はレプリカを代用するそうです。…まさか、ナマエまで加担しようとは思っていませんよね?」

「そんな事、思っていませんよ。私はまだ、何も出来ていませんから」

嘘をついてごめんなさい。けれどもあなたは鋭いですから気付いてしまうでしょうか。そんな些細な不安を残しながら、私は一人、グランコクマをぐるりと回る。すると目についたのは燃えるような、赤。真っ黒な服。ああ、わかった。この人が六神将の。

「…あなたが、アッシュですか」

「どうやらお前もレプリカのようだな。…病死したとされる貴族の娘にそっくりだ」

「あなたに、お願いがあります」

私の最後の悪あがきをどうか許してください、ジェイド。