お父さんは世界を障気から救う為にファブレ家の息子であるルーク達と一緒に旅に出ているそうだ。お父さんに同行している方々に紹介する前に彼らから名乗り出てくれた為、気兼ねなく呼んでいい、と言ってくれた。私を見つけてくれた時はちょうど、グランコクマに療養も兼ねて滞在していたらしい。それなりに私も戦える。大陸を一人で越えてここまできたのだから。そう話すとお父さんは私の同行を認めてくれた。

「はじめまして、ナマエと言います。お父さ、ジェイド大佐の御招きで同行させていただくことになりました」

「女の子…?大佐、彼女は?」

「私はレプリカです。…足手まといになると思ったらその場で捨て去っていただいても構いません」

捨て去るって物騒な…と、悲しそうな顔で見るルークに私は出来る限り笑って言った。私はただのレプリカですから、こうして生きていられるだけでもいいんですよ。するとルークは俺と同じなんだな、ナマエも。と静かに呟いた。しおらしい事を言ってしまいました。

「だからナマエは大佐の事を『お父さん』って呼んでるんだねぇ」

「旦那が『お父さん』、か。何だか馴染まないなぁ」

「そういった柄ではありませんものね、大佐は」

アニスがそう言うとガイもナタリアも苦笑いでお父さんのほうを向く。お父さんはいつものように、嫌味のこもった笑みでいた。ナマエ、とお父さんが私の名前を呼ぶ。何だろうと少し怯えながらお父さんの顔を見上げると頭を軽く撫でて言ったのだ。

「さすがに『お父さん』というのも馴染めないので、ジェイドで構いませんよ」

普通だったらお父さんでいいはずだけど、きっとついこの間会ったばかりの『子供』に言われると不自然なんだろう。でも嬉しかった。お父さんって呼ぶよりも名前で呼んでみたかった。何故かはわからないけどドキドキしてる、変なの。

「これからはお父さんじゃなくて、ちゃんとジェイドって呼びますね」