フォミクリーを知る少女が現れた。名前はナマエ。今まで貴族の家に影武者としていたという。生みの親は自分であると打ち明ければナマエはぼろぼろと涙をこぼして笑った。

「会いたかった…やっと、会えた…お父さん…っ」

私が研究していた頃のフォミクリーは外見こそは被験者と同じように出来ていてもその能力や記憶まで複製は出来なかった。ナマエもまた同じなのだろう。引き取り先の貴族がよかったのが幸いだったようだ。彼女は一から言葉を教えられ、その貴族の娘の代用品として過ごしていたらしい。ただ、その貴族達は心優しく…レプリカであるナマエを一人の人間として見てくれたのだと。

「友人は、私をお友達だと言ってくれました。自分と瓜二つの、レプリカを」

だけど、友人は病で死んでしまったんです、私を残して。悲しそうに目を細めて呟く彼女の瞳が揺れる。

「ナマエ、あなたに住む場所はありませんよね?」

「えっ…あ、はい。ずっと放浪の身で友人から教わった譜歌でお金を頂いていましたから」

「少々不便かもしれませんが軍の基地に住みませんか?最低限の生活には不便しないはずです、私もいますし」

それに何より、自分の不始末にケリをつけたかった。彼女のようにしっかりと動くレプリカもいれば実験で造られた直後、すぐに私が処分してしまったレプリカもいる。せめて生みの親である私をこうして自我で探してくれた彼女だけにでも…罪滅ぼし、をと。

ただの綺麗事かもしれない。自分がやった事は大きい。それは理解している。もし彼女がレプリカじゃないとしても、私はこうしていただろう。彼女には惹かれるものがあった。馬鹿馬鹿しい、と私はぽつりと呟く。どうかしたのかと顔を覗き込むナマエに私はいつも通りの張り付いた笑みを見せて軍へと案内した。

さりげなく、彼女が差し出してきた手を繋ぎながら。