私、ちゃんと消えたのかな。ジェイドとお別れできたのかな。曖昧な思考を手繰り寄せて考える。でも変だな、消えたレプリカに意思はあるの?

「――血中音素も正常値ですね。…おや、目が覚めましたか?」

目が、覚めた?

瞼を少しずつ開けていくと広がっている世界は研究室のような場所。私の顔を覗き込んでいたのはレムの塔で爆発に巻き込まれたはずの眼鏡をかけた人。寝かされていたベッドからゆっくり体を起こしていくが節々がズキリと痛む。サフィールとジェイドに呼ばれていた彼は体の細胞が壊れかけているから安静にしているようにと釘を刺した。

「私の研究室のひとつですよ。障気を消した後、あなたの体が落ちてきたのです」

手も足も半分失くした状態で透けており、連れて帰っても一か八かの状態だったという。慢性的な鈍い痛みを堪えながら、腕を見ると半分新しいパーツに組み替えられているように見えた。どうして彼は私を助けたのだろう。そればかりが突っ掛かって私はそっと声を出す。

「あなたは…ジェイドのそばにいるべきだと思ったんですよ。親友であるこの私よりも」

びくり、と肩が震える。そんな事無い、そんな事…ない。大好きなジェイドのそばに、いられない。

「もしもあなたがジェイドを思って消えたのならそれは間違いです。ジェイドはそんなこと望んではいませんよ。――…むしろ、あなたにはずっと一緒にいてほしいのだと思います」

「私…ジェイドのそばにいてもいいんですか?彼が大好きなんです、愛の意味は知らないけれどきっと愛してる。造られたレプリカの価値はありますか?分からないけれど、苦しくて仕方がないんです」

ぽろりと頬を伝い落ちる存在はあまりにも鮮明で、頭がぐちゃぐちゃになる。何が正しくて、何が違うのかも分からない。そんな私にサフィールは思うままに動けと言った。

私が思うままに。気付いた頃には慢性的な痛みを忘れてすぐ外へ飛び出していた。