今何をしているのだろう。何処にいるのだろう。それさえも分からないくせに体は先走る。会いたい、話したい、抱きしめたい、私がいる事を証明したい。私はグランコクマに足を踏み入れた。

陛下は私を覚えていてくれるだろうか。ジェイドの行き先を聞かなくちゃ、急がなくちゃ。何に私は急いでいるのだろう。一刻も早く、会いたいと思うからだろうか。すれ違い様にさらりと、懐かしいような亜麻色の髪の毛が目に付いた。

「ナマエ…?」

感極まって声が出ないとはこの事を言うのだろうか。カタカタと足が震える。動けない。そんな事を思って涙がボロボロ出てきてまた頭がぐちゃぐちゃになる。

すると、突然視界が真っ暗になった。温かかった。理解するのに時間はかからない私、ジェイドに抱きしめられているんだ。

「どうして…いるんですか…」

「未練が残っていた、なんて言ったらおかしいですか?…消えたつもりが、私の体、残っていたんです。そこをサフィールに引き取られて、戻ってこれました」

ジェイドが私の体をずっと握り締める。完全に戻っていない体に負担をかけないようにか…とても優しかった。彼の肩が震えている。初めてだった。ジェイドが他人の前で、泣いているなんて。

「ジェイド、泣いてるんですか?」

「…何年振りでしょうか、人前で泣いたのは…」

私の肩に目を伏せたままのジェイドはそっと呟く。そうして次の言葉を口にした。

「もう、勝手に離れないでください。…どうやらナマエの所為で知りたくない事を知ってしまったようですから」

「もちろんですよ。…もう、私も離れたいとは思わないみたいです」

それから私達は、誰にも見えないようにキスというものをした。