ナマエは消えた。ルークの負担を少しでも軽減させる為に、そして私の所為で。手紙を残して。何故あの時抱きしめてでも引き止めてやれなかったのか。後悔の念は渦巻くばかりだった。死に恐怖を感じなかったはずだった。それなのに彼女がいない事だけで世界が色褪せる。

『さようなら、…大好きです』

消える前の彼女の笑顔が痛いと感じた。辛いのは私のほうだったのかもしれない。親子のように過ごした。ナマエが隣にいるのは当たり前で、ぬくもりを感じなくなった瞬間から辛いと感じた。

今更になって気付く自分に嫌気が差す。きっと私もそうだったのだ。遅すぎた。ケリをつけたい。それはただの言い訳に過ぎなかったのかもしれない。

「私も、ナマエを愛しています」

聞こえていますか、ナマエ。あなたの価値は十分にあったんです。私の中で、ずっと。誰よりも価値を求めていた。そんな思いをさせたのは私が原因。だが彼女はいつも前向きだった。レプリカである事を悔いたりはしなかった。それほどまでに強い意志を持った彼女は呆気なく…消えた。

――存在価値を教えてほしかった。私に居場所はないから。答えが知りたいのに誰もそれを知らないから。

無垢なナマエはずっと言い続けていた。気付いていなかったんですね。前からあなたの価値はあった。価値なんていらなかったのかもしれないですが。

もしも彼女が戻ってくるならばなどとは考えない。同じ過ちをまた繰り返すなんてナマエは望んでいないだろうから。