立向居が好き。それは恋愛対象として、男の子として。
そう気付いたのがつい昨日の事。
ドキドキすると秋ちゃんと夏未さんと春奈ちゃんと塔子ちゃんに言えば四人は口を揃えて言うのだった。

「それって名前ちゃん、恋だよ!」

「案外鈍いのね、名前さんって」

「立向居さんの事が好きなんですよ、恋愛対象として!」

「名前が恋か!何だか嬉しいな!」

浴びせられた女子独特の恋バナに私は付いていけなくて呆然としてしまう。
特に秋ちゃんと春奈ちゃんの盛り上がりようがすごくて何とも言えなくて…
その日はほぼ一日中みんなに質問攻めされ続けてクタクタになってしまったのだが。

問題はその後。どうすればいいのか、どう行動すればいいのかだった。
ベンチに座ってバインダーを抱え込みながら溜息をひとつ。午後の練習もしっかりとやっているメンバーを見る。
頑張ってるななんて思いながら私の目は自然にゴール前でシュートを受け止める彼へと動いた。

「…立向居」

ぼそりと名前を呟いた途端、何故だか変な感情が込み上げる。何も言えないのってこんなにもどかしいんだ。
答えをちゃんと言いたい。けれどもしも、もう私が好きじゃなくなっていたとしたらそれは。

「臆病者、だなぁ。…今更怖くて聞けないとか」

必死に頑張る君を見るほどに広がっていく感情。どうしよう、歯止めが利かなくなるかもしれない。
とりあえず取り出したメモに『みんなが寝た頃、キャラバンの外で待ってる』と名前を添えて書き記す。
荷物の上にそっと乗せればドクドクと脈打つ音がずっと余韻を残していて死ぬほど恥ずかしかった。

余韻嫋嫋、君に届け、この思い!