練習を終えたキャラバンのメンバーはそれぞれが思い思いに夜の自由時間を過ごしていた。

疲れ切っているはずなのにはしゃいでいたり、既に眠ってしまっていたり。
キャラバンでの生活にも慣れてきた私は全然不自由は感じなかった。むしろ結構好き勝手やらせてもらってるなと思っている。
普段は出来ないはずの試合をやらせてもらえる。強い相手と戦える。私にとって嬉しい事この上ないのだ。

11時を過ぎた頃にはみんな疲れて眠ってしまっていたが外の空気を吸いたくなった私は静かにキャラバンから出る。
雲ひとつない星空からは月がはっきり見えて無数の星が光っていた。夜風は冷たいけれど意外と平気。涼しいくらいに感じる。

「何してるんですか苗字先輩?」

「立向居こそ…寝れなかったりでもしたの?」

振り返った先には立向居の姿。寝れなくて外を見たら先輩がいたので、と答えた彼は大きなあくびをひとつ。
私がもう一度空を見上げればそれに合わせるように立向居も顔をあげた。

「先輩、そろそろ戻らないと風邪ひいちゃいますよ」

「そうだねー…戻ろうか!」

「星、綺麗でしたね」

「今日すごくはっきり見えるよ。ええっとね…ほら、あれがスピカ」

そんな一般的程度の知識を懸命に探って些細な話をしながらキャラバンに戻った私は窓から星を覗く。
きらきら光る星のひとつ。もう一度見たけれど立向居と見た時のほうが綺麗に見えていたような気がした。
窓から見える星を指でなぞると何故だか分からないけれど些細な嬉しさをそこに感じた。