残っている時間はあと二週間ほど。確信はなかったもののその時間制限に狂いはないような気がした。
道中で遭遇する魔物への反応が鈍くなってしまった事もあり、何かと傷を負う事も多くなってしまった。

「俺様の愛を受け取ってちょーだい!」

レイヴンから放たれた矢が魔物から距離を置いた名前の傷口に刺さり淡い光を放つ。
あらら、冷たいのねー?と少しだけ大人げなくふてくされた様子で言ったレイヴンを横目に勢いをつけて魔物を斬り裂いた。

「結構数多くて手ごたえあったぜ」

ユーリは剣を鞘に納めると口元をあげて楽しそうに笑う。それを見て少しだけ身震いしたものの戦闘好きなんだなと改めて感じさせられた。

そんなユーリを見て半分呆れた様子で眺めるカロル。リタも同様に呆れた様子でぶら下げている本を取っては目を通していた。
日が高く昇りつめ、お腹がすいたという声も上がってきたところで少し離れた見晴らしのいい丘で昼食を取る事になった。

みんなに配られた美味しそうなオムライスにはたっぷりのケチャップがかかっていて見ているだけで我慢できなくなる。
全員で集まり輪をつくっていただきますと挨拶をしっかりしてから食事を始めた。
オムライス以外に簡単なおかずも用意されていて早い者勝ちだとそれぞれが急いでつまんでいく。
こうして食事をするのは本当の家族のように心地良くて安心できた。

「あ、そうそう!この間いいものもらってきたんだ!」

得意気な表情をしたカロルは大きなバッグをがさがさと探る。すると中からはあるものが出てきた。
カロルが出したのはどうやって手に入れたのかは分からなかったがカメラだった。

「この間のギルドの仕事で報酬以外にいらないからって譲ってもらったんだ。ほら、これで写真撮ればいい思い出作れると思わない?」

にっこりと笑いながらそんな言葉をかけてくれるカロルに感動して泣きそうになったけどそれをぐっと堪えた。
思い出に残したいと思った風景なども撮っていくとすぐにフィルムがなくなってしまった。
現像して取り出された写真を眺めながら雑談。みんなで集合して撮った写真が一番いい笑顔してるな、なんて思いながらめくっていく。

その時に手を見るとうっすらと消えかかっている事に気がついた。手が透けて見える。
ユーリが名前の右手をぎゅっと強く握りしめてきた。
突然の事にユーリのほうを振りかえるとユーリはこちらを向いて大丈夫だ、と一言。
その言葉にどれだけ私は安堵して、どれほどまでにユーリを好きになっていたのか気付かされたような気がした。

強く握りしめられた手にはユーリの体温が伝わってくる。
消えていく手を強く握って、そんな優しさと離れる事を寂しく感じながらも私は一人、笑みを零した。