テルカ・リュミレースにユーリと生活を共に過ごすことになってから一ヶ月ほどが過ぎた。
旅を続けていると言っていたユーリの事は本当でそれも世界を左右するほどの事でもあるのだと。
ああ、まるでRPGのような世界だ。魔物がいるというところからして大体推測は出来ていたがここまでとは。
不安だらけだけど…旅の仲間達との関係に家族のような温かさを感じていた。

「テルカ・リュミレースはすごいね。うらやましいって思っちゃう」

「確かにこうして見るととても綺麗ですよね。遠くから眺めるより間近で見た時の新鮮さというか…」

けれど、触れる事のなかった事に触れる事がこれほどに勇気のいるものなのだと感じた。
何かを、生き物を刃物で切りつける。それはとてつもない恐怖だった。魔物を斬った時の感触、血飛沫、死体。慣れてきている自分が確かにいた。

「大丈夫、名前?顔色すごく悪いよ?」

「あららー大丈夫?慣れてないから仕方ないのかもねぇ」

「ワゥン!」

カロルとレイヴンとラピード(きっと心配してくれたんだよね?)にそう言われてやっと体が強張っていたのに気がつく。

「大分慣れてるから心配しないでよ、平気だから!」

「あんまり無理して強がって足元すくわれないでよねー?」

些細なことではしゃいだり騒いだり出来る。この関係はとても居心地のいいものだった。
そばにいて話して笑って怒ってはしゃいで。そんな事ばかりで色恋沙汰なんてものはないのだけど。
テルカ・リュミレースでの日常が思った以上に輝かしくて、空を仰いで名前は純粋に思った事を口にした。

「ねぇ、ユーリ」

私は私の恩人にぽつりと呟いた。

「もうちょっといたいって思っちゃうんだ、ここに」

「いたきゃずっといればいい、だろ?」

その言葉を聞いた名前はとてつもなく込み上げる嬉しさに笑みを零した。
やっと慣れてきたテルカ・リュミレースにもう少しだけ長く居る事が出来たらいい、と。