「うっわ、痛くないのか苗字?」

「全然いける。あとはやっぱり慣れてるからさ」

ペッタリという言葉が正しいと思うほど額を地面につけた苗字は悲鳴を上げる事もなく柔軟体操をこなす。その手伝いとして駆り出された俺も強制的にやらされたんだけど…その痛みがズキズキと体に響いていた。

「一之瀬は結構固いんだね」

「あんまり男子で柔らかい奴っていないんじゃない?」

むくりと身体を起こした苗字は前のサッカー部の男子達も私と同じくらいだったと思うよ、と言う。

「んー…そっか、固いのが普通か。前のサッカー部は基礎をとことんやってからだったから柔軟やる決まりだったんだよね」

「雷門はどちらかというと柔軟をやるっていうより実践でやり込んで伸びるタイプだからだと思うけど」

それ言えてるよね、と立ち上がって大きく背筋を伸ばした苗字はボールを手にとってリフティングを始めた。まだ少し痛みの残っている俺は座り込んだまま苗字の様子を眺める。

「あ、そうそう。今度の日曜日もし暇だったら私の家に来てくれないかな?」

「それはつまりどういう事?誘ってるの?」

「お家デートのお誘いだけど」

親出かけるらしくて一人だからさ、と苦笑して言う苗字は無理だったらいいよと付け足した。

「苗字が一人きりじゃ心配だから俺が守ってあげるよ」

調子よく抱きついてそう言うとあたふたと苗字は顔を赤くして一之瀬がいてくれると嬉しいよ、なんて小さく呟く。そんなこと言われたらなおさら断れるわけないじゃないかと思いつつ額にキスしてやる。

ここ学校だよ一之瀬!そう叫ぶ彼女が可愛くてつい唇にもキスすると調子に乗るなと顔を真っ赤にして怒られた。


何事も慣れだよ、慣れ

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