それはそれは、バカみたいに目が真っ赤に腫れていた。
当たり前だと言えばきっとそうだと思う。つい先日までずっと尽くしてきた人に、とうとう別れを切り出された。
正直に言ってしまうと薄々感づいてはいた。それが余計に寂しいと感じたと共に、何よりも自分の気持ちだけが空回りしていた事に悔しさを覚えた。
私から切り出していれば少しは楽だったろうに。今更ながらの名案に苦笑するしかなかった。目にフィルターが掛かる。ああ、世界がぼやけてる。

「フラれたのか」

いつの間に入ってきた、などと問いかける余裕は全くと言っていいほど無い。ただ鼻をすすりながら目の前にいるジャンルカに自分を嘲笑するような笑みを浮かべるしかできない。

「精一杯、私は尽くしたつもりだったけど」

空回りしちゃってて、ダメだったみたい。それを言うのが精一杯だった。
恋ってどちらかが重すぎちゃいけないんだと今更思う。私ばっかり好きで仕方なくなってたんじゃないかな、なんて思ってみる。それさえバカみたいに思えて仕方なかったけれど、ジャンルカは何も言葉を発せずに私を見ていた。

「俺に、しとけよ」

そんな言葉を囁いたジャンルカの唇が腫れた目にそっと触れる。思っていた以上に柔らかなそれは、ひんやりとした冷たさを持っていて触れた部分に熱が集まり始める。

「女好きに言われると甘えにくいよ」

もう一度、今みたいに他の女の子のところに行ってしまうのではないか。そう考えるとジャンルカの甘い優しさは今の私にとって一番の恐怖でしかなかった。

それでも受け止めようとする彼に、私は涙を流すのだ。


滑稽な望みは誰の耳にも

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