息を吐いた、呼吸をした。意識しなければ止まるのは完璧を目にしたからだと思う。
バダップ・スリード。彼は本当に、寸分狂いもなく完璧だった。あのエスカの策略を打ち砕いて、あのミストレーネとの決闘に勝って。だからこそ、私はまさに息をするのも忘れていた。それを目にして数十秒、私は大きく溜め息を吐く。

(彼には表情がない、声色だけでしか判断することが不可能だ)

ミストレーネとバダップの勝負をスタンドの上から見下ろしていた私は憂鬱に浸る。もっと内なる強欲を秘めているのかと、冷静の裏に何か面白いものがあるのだと期待していたからだ。
まぁ最もヒビキ提督は求めていないであろうことだが私は求めていた。この退屈を凌ぐものがこの士官学校にはないのかと。

「…つまらない」

「お前も相変わらず退屈そうなツラしてんな、名前」

「エスカ、近くで見てたんじゃなかったの」

エスカバって呼べよ、と文句をつけられたが私は彼を見ないまま、下に残っているバダップとミストレーネの様子を見ていた。気になる。その冷静の中に何を秘めて何を求めているのか。私はその真意を解き明かしたい。

「よくよく考えてみたら面白い事じゃない」

「また変なこと考えてんじゃねーだろうな、お前」

クツクツと笑えば呆れ顔で私に視線を送るエスカを横目に去りゆくバダップの背中から私は目が離せなかった。
今私の思考を、脳を全て埋め尽くしているのはただひとつ。

どうやって君の『完璧』を崩せば真意を見られるんだろうと。


退屈凌ぎ

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