「うっせーよミストレ、黙れ女顔」

「君ってさ、これくらいの作業も一人で出来ないの?」

「…今回はちょっとミスっただけよ」

確かにね、とぽつりと呟いたミストレの声が異様なくらい大きく反響して耳に入ってきた。
ぐだぐだとお説教。それも私が標的をしっかりと倒しておかなかったから…と言われたけど、それは標的のあまりの執念の所為だ。思い切り蹴って肋骨一本は確実にへし折ってやったはずなのに、立ってきたんだもの。

胡坐かいてドスンと地面に座り込む。「女の子らしくしなよ」知るかそんなもん。
擦り切れてしまった軍服からちらりと見える掠り傷。別にどうってことはないけれどちょっとだけ血が滲んでた。顔面グーパン食らったし、鼻血出たし。何で気が緩んでたんだろう。
溜息をひとつ吐くと無駄に整ってて、肌が綺麗で私よりも女の子みたいなミストレが呆れ顔でこちらを見ていた。

「任務は不手際があったとはいえど、無事に完了。結果オーライじゃない」

「そういう楽観的な考えが嫌いだよ、特にバダップなんかは」

「ミストレが楽観的な考え嫌いだろうと、私には関係ないわ」

ふいっと踵を返されて、私は一回だけ舌打ちした。でもミストレが間に入らなかったら私は死んでたかもしれない。
あまりにも曖昧な感情があってもやもやする。気持ちがいいとは言えなかった。

(別に私は、何ともないはずなのに)

遅くになって気付いた頃にはもう苦すぎて手遅れだわ。

焦げた砂糖は苦かった

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テーマ「人外ファンタジー」
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