イライラ、イライラ。そんな私の状況を分かってくれているのかマークは隣に座っているだけで私に話しかけてはこなかった。入試目前、残り期間は一週間を切った。私立とは言えど私にとっては初めての入試になる。

「…ねぇ、マーク」

一通りのワークを終えて一息ついた私は隣に座ったままのマークに声をかける。「どうかしたか、」そう言って私の顔を覗き込んできた彼の顔を見て少しほっとした。まるで癒し、私の癒しだ。ひやりと額に冷たい感覚がした。マークの手、冷え切ってる。それを感じてようやく私は今自分がどんな環境にいるのかを把握した。

「ご、ごめんねマーク!暖房も入れてなくって…!」

「大丈夫だよ、ブランケット借りてた」

「でも手、すっごく冷たいよ!あったかいココア作ってこようか?」

座っていた椅子から立ち上がろうとすれば額に当てられていた手が私の手に絡む。その冷たさにびくりと肩を揺らせばマークは少しだけ口元を上げた。え、何、何?

「なぁ、名前」

「どうかしたの、マーク」

「ずっと放っておいたんだから少しは構ってくれるよな?」

ニヤリと、笑みを浮かべたマークの顔を最後にふわりとすっかり馴染んだ香りがした。ああ、もうどうにでもなれ!


放り投げろ、何もかも

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テーマ「人外ファンタジー」
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