あークソ、最悪。今のテンションも状態も絶不調だ。それもこれも血の気の多い我がプロミネンスの主将であるバーン(様)のせいである。ぷっくりと腫れた左頬。唇の端は切れていて血が滲んでいるし、挙句の果てには左頬に3本ほどの切り傷。レアンやバーラに手当てされ渋々大きなガーゼをつけている私はズカズカとわざと大きい音を立てて廊下を歩く。

「どう、したのですか、エイリア様」

とても綺麗な緑が目に入る。私の前方にはセカンドランクのレーゼの姿。恐る恐ると言った様子で私に近づくレーゼはとても可愛い。私の癒し。

「バーンに殴られたの。喧嘩しちゃってね」

私だって一応女なのにあいつ手加減とか知らないから。呆れてものも言えなくなりそう。そう小言を漏らすとレーゼの指先がそっと頬へと伸ばされて、微かに触れる。ピリッと鈍い痛みが走って顔を歪めるとレーゼはそれに気付いたのかぱっと手を引っ込めた。

「すみません、大丈夫ですか?」

「いやいや全然平気!ちょっと痛いだけだしすぐ治るよ」

「…羨ましい」

「…どうして?」

ぽつりと呟いたレーゼは私の目を覆い隠すとそっと唇に、触れるだけのキスを落とした。私の心臓はばくばくと脈を打ち始めるし顔は紅潮するしちょっと混乱してきた。

「バーン様がいつもあなたのそばにいられることが、です」

少しふてくされた顔で、そんな言葉を。


私に階級など意味をなさない

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