※帝国学園がエスカレーター式の学校前提のお話


入学式がやってきた。今日からは帝国学園中等部に通う事になる。エスカレーター式のこの学園にはときどき中等部から入ってくる奴もいる。まるで軍服を思わせるような指定の制服を着て俺は足を踏み入れた。

この学園の入学式には進級生と新入生しか参加しない。オリエンテーションのように自由席のようで適当に空席に座る。俺に続いて入ってきた女子。見た事のあるその姿は河川敷でサッカーをやっていた女子だった。
一躍有名だったその人物は小学生サッカーでミッドフィルダーとして活躍していた。そのプレーを見た事もある。座る席を探しているその人物に向かって俺はぼそりと声を出して促した。

「ここ、空いてるぞ」

「えっ、あ…隣、いいかな?」

黙って頷いてみせると少し怯えたように隣に座って名前を尋ねてきた。

「君の名前は何て言うの?」

「佐久間。佐久間次郎だ」

「私の名前は、」

「苗字名前、同じクラスだったし新入生なんかお前を含めて二十人前後だからな」

それにお前がサッカーやってたのも見た事がある、と言えば見た事あるんだね…と頬を赤らめた。あまり目立ちたいと思うタイプではないのだがサッカーになると我を忘れたように楽しんでしまうと呟いていた。

「あの、さ、佐久間君もサッカーやるの?」

きらきらと目を輝かせながら言う苗字は大声を出してしまった事に気が付き、すぐに口を押さえる。嬉しそうな苗字はにこにこと笑いながらマネージャーやりたいなって思ってたんだ、と一言。

「でもよかった。佐久間君みたいな優しい人がいて、心強いよ」

これからよろしくね、とはにかみながら言った彼女が眩しく思えて、その瞬間俺は恋に落ちたのだと確信した。忘れられないのは多分、苗字に出会ったのがこの日だったからだろうか。

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合同企画あんだんてへの提出物


忘れもしない入学式

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