「アツヤ君って不器用?」

「う、うるせぇな…」

散乱した包帯やガーゼが士郎君…いや、アツヤ君の膝の上に乗っている。彼なりに自分で何とかしようと頑張ったのだろうか。士郎君の体であるわけだし気を配っているのを何となく知ってる。何だかんだ言っててもお兄ちゃん思いなんだよね、素直じゃないだけでさ。

「正反対だね、士郎君と。士郎君は難なくこなしてたよ」

「俺だってやりたくてやってるわけじゃねぇけど…仮にも兄貴の体だから大怪我するわけにもいかねぇしな」

「素直じゃないなぁ。正直にお兄ちゃんが心配って言えばいいのに」

「お前は一言余計なんだよバーカ!」

ぎゃあぎゃあと言うアツヤ君は放っておいて膝の上に乗っていたガーゼと包帯を手に取った私は彼の前に屈み込む。傷口を出してと私が言えば別にいいとアツヤ君は傷を出すのを渋った。

いつも思うけどアツヤ君になった士郎君は私に素っ気ない態度を取る。そこまで嫌われるような事をしたのかなぁ。試合でパスがうまく渡せなかったのを怒ってるとかだったりして。考えれば考えるほどいろんな方向へ思考が動く。

「渋る必要ないでしょ、ほら出して」

「…名前ちゃん?」

「え…っと、士郎君、アツヤ君は?」

急にアツヤ君の様子が変わって士郎君に戻ったのだと理解した。もしかして逃げられたとかだったりして。どうしてだ、私の事そんなに嫌いなのか。士郎君の怪我の手当てをしながら溜息をついた私はぶつぶつと呟きながらアツヤ君に問いかけようなんて試みる。

「アツヤ君は私の事嫌いだったりすんのかな、素っ気ない態度とられるし」

私の小言を聞いた士郎君はくすくすと笑いながら私を見る。キョトンとしながら私は彼を見てどうかした?と問いかけてみる。彼は笑ったまま私に告げるのだ。

「素っ気ない態度とるのはね、アツヤの照れ隠しなんだよ」


素っ気ない態度

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