「半田ー半田ーねぇってば半田ーはん、」 「ああもうなんだよ苗字!」 誰もいない教室の中で何度も何度も繰り返される名前。窓の外をぼんやりと眺めながら久し振りの部活休みを過ごす。体の節々が痛くて正直教室の席から立ち上がる気力さえもない。「だって全然こっち向いてくれないじゃない」隣の窓際に座っている俺に言葉を投げかける苗字に俺は手短な謝罪の言葉を返す。「考え事でもしてたの?」と問いかけられたけど何だか疲れているみたいで苗字の声が遠く聞こえる。すると突然、苗字は耳元で真一、と囁くのだった。 「っ、いきなりなんだよ…」 「考え事ばっかりしてるし、いつもサッカーばっかりだし。確かにサッカーやってる時の真一は楽しそうで好きだけどさ」 声を震わせて目にうっすらと涙を溜めてる苗字は俺の隣で呟く。ああ、悪いことしちゃったな。そんな罪悪感が頭をよぎって慌ててごめんと何度も繰り返した。 「…ぷっ」 唐突に聞こえた、微かな笑い声が耳に届く。その笑い声は次第に大きさを増して苗字は腹を抱えて笑いだした。苗字は俺の背中を思いっきり叩いて俺の荷物を持ち上げて教室の扉に向かって走り出した。 「嘘泣きだよ、バーカ!」 振りかえり様にあっかんべーなんて小馬鹿にされて痺れを切らした俺は勢いよく席から立ち上がり、苗字を追いかける。まんまと騙された俺も悪いけど、あとで倍返しにしてやるから覚悟しておけよ! 嘘つきの追いかけっこ |