荒くなった呼吸を落ち着かせるように大きく息を吸い込んで気合を入れる為にグローブをもう一度深くつけた。気を抜いたら絶対に体を痛めると言う事は理解していたので神経を集中させる。

なんでただ雷門でマネージャーやってるだけの一般人の私がこんな事になっているんだろう。ましてやエイリアの練習に参加させられているなんて。

「気を抜くな、名前」

「そもそも君がここに連れてきたんでしょ、っ!!」

背後から聞こえたガゼルの声にイラつきながらも私はダイヤモンドダストの素早いシュートを受け止める。必殺技でもないシュートなのに反動が大きい。それだけ力が強いということだろうか。足を踏ん張ってなんとか受け止めた私は大きく深呼吸する。受け止めるのさえ精一杯。

「なんで私にこだわるの?エイリアと人との身体能力は随分と違うと思うんだけど?」

「私は名前の覚えている情報、名前の力が必要だ」

「生憎だけどお断りさせていただきます。私がやりたいサッカーじゃないから」

刹那、ボールが私にものすごいスピードで向かってきて私の頬を掠めてゴールへ入る。背後で練習風景を見ていたはずのガゼルがいつの間にやら目の前に立っていた。頬に少しだけピリッとした痛みが走ったものの全然大したものではない。

突然の動きに体が動かず反応できなかった私はただ呆然とガゼルを見つめた。互いの距離は一メートル程度しかない。

「すまない、大丈夫か?」

降りかかる優しい言葉に私は困惑してしまった。

彼は変だ、なんでそんな優しい言葉を投げかけたのかが理解できない。
普通そこは嘲笑ったりするものではないのかなんて思考を巡らせていた私は無言。

「…言い方が悪かったな。私には名前自身が必要だと言う事なんだ」

必要、私自身が。ガゼルの言葉を理解した私は甘い痺れを感じたような気がして彼に聞き返す事しか出来なかった。相当私の思考は混乱しているようで上手く言葉が出なそうだったが声を振り絞る。

「それって、どういう意味合いでなのかな」

わからない、なんでそうなってしまうんだろう。本心を知ってしまえば私も彼を好きになってしまいそうだ。


知らないほうがいい

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