放課後のチャイムが鳴ると同時に苗字は荷物をまとめるとすぐに教室を後にした。声かけようかなーなんて思ったけどかける暇もないくらい颯爽と出ていったので後ろ姿を見つめただけ。

苗字の足は昇降口とは逆の方向へ進んでいく。いつもならすぐに部室に行くのに何かあんのかと興味が湧いてしまう。その興味を抑えて俺はまっすぐ部室へ向かった。いつもならいるはずのマネージャーの姿もない。

円堂の声で練習を始めるとちらりと教室の窓から苗字の姿が見えた。確かあそこは調理室、だったよな。

「何してんの、苗字?」

「うわっ、土門!練習中じゃないの?」

窓から顔を出して問えば一瞬驚いた様子を見せる苗字は随分とシンプルなエプロンを着けていた。苗字はすぐに作業を止めて俺のほうへ駆け寄ってくる。ふわりと甘い香りが運ばれてきて何となく状況を理解した気がする。調理室には苗字以外にも秋や夏未ちゃんや春奈ちゃんがいたからだ。

「マネージャーみんないないと思ったらお菓子でも作ってんの?」

「私はみんなに教えてるっていうか…そんな感じ」

作業を進めている女子はすごく真剣に作っててすごく意気込んでる感じがする。秋と夏未ちゃんはきっと円堂にでもやるんだろうな。春奈ちゃんは鬼道とか。じゃあ苗字は誰にやるんだろ。

「え、私?…あげる人、かぁ」

考えてはいたんだけど受け取ってくれるかな、やっぱり好みとかあるし。頭を抱えて悩む苗字がすごく真剣そうな目をしていてあげる相手がすごく気になった。誰の事考えてるんだろう、苗字は。

「その相手って誰?気になるんだけど」

「それはその…」

言いかけた言葉を遮るように秋が苗字を呼ぶ。まるで漫画のような展開に苦笑してしまった。今行くね、と優しい声をかける苗字は俺に手刀をあげてごめんと謝る。早く行ってやんな、と言えばありがとうと笑うのだ。

「あのさ、渡す人の事だけど」

「教えてくれんの?」

意外な答えが返ってきたので俺は確認の為に問いかけてみる。ガード固い、というよりは男女関係なくフレンドリーな奴だから珍しい。苗字はコクコクと頷いては声に出すのだった。

「土門に、渡そうかなぁって思ったんだよね」


お菓子以上に甘ったるい

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