※ヒロインは他校生 「帝国学園の鬼道有人が雷門に来てるとは思わなかったなぁ」 日が傾き、オレンジ色の光が照らしだすグラウンドにそんな気の抜けた声が響いた。随分と前に何度か聞いた声の主は練習の時に転がっていったのであろうボールを手にして俺の前にいる。以前に見たことのある姿。そうだ、あれは帝国にいた時にデータを取りに行った覚えがある。 「苗字名前、だったか?確かゴールキーパーをやっていたな」 覚えていた事には素直に喜んでいたようだ。ただ憎しみがこもったような表情をしたのを見逃しはしなかった。あの中学ではデータを取り終えた後、そのまま部員全員を気絶させた。例外として苗字は倒れる事無くフィールドに立ち続けていたもののそれは既に意識なく動いているようなものだった。その時の事は忘れる事無く残っているのだろう。今でももちろんの事。 「重傷なメンバーが何人かいてね、結局うちの中学は出られなかったわ」 まぁ元々女子だから参加できないんだけどね。付け足すように言った苗字は微笑みながら俺を見る。何かをじっくりと見定めるような目で見てきたのだ。不快にもほどがある。 「帝国にいた時と変わったんだね。今のほうがいいよ」 「…お前は責め立てたり、恨んだりはしないのか?」 「だってもう終わったじゃん。…確かに立ち直るのは簡単じゃなかったとはいえ、むしろ刺激されたんだよ。その程度でへこたれる根性無しはいなかったからね。あの後は打倒帝国!ってなってたし」 だから責め立てたり恨むより感謝できるんだよね、私だけかもしれないけれど。その言葉を聞いた俺はいつの間にか吹き出してしまったようで茫然と苗字に眺められた。すまない、と謝ると別に気にしてないからと素っ気ない言葉を返される。 「君がそこまで変化するくらいなら相当雷門中はいいチームなんだね」 苗字がそう言いながらボールを手渡してきた。受け取った俺は迷うことなく答えを出す。 「そうかもしれない。…いや、そうだな雷門は」 「今の君とならいいサッカーが出来ると思うよ、私は!」 今思えばきっと、あの頃から苗字に惹かれていたんじゃないかなんて今更想いを馳せた。 あの日の夕焼け |