まさかこんなことになるなんて想像してなかった。予想外の展開に少しだけ戸惑ってしまう。キャラバンを降りたのが間違いだったか、なんて考えが過ったもののとりあえずは予定通りに事は進んでいる。

ただまさか、真・帝国として試合に出されることになってしまったとは。影山…今はとりあえず総帥、か。私が出れば雷門はきっと困惑して士気を低下させるだろうという事になると思ったのか。

全力を出さなければ困惑した雷門は全力を出してくれないだろう。本気でやってもらわないと確実に負けてしまう。

「どうしてだ…苗字」

ぽつりと呟いた彼の声がはっきりと耳に届く。フィールドを踏みしめる音さえも鮮明に響いた。彼は、鬼道は私が真・帝国に潜入した理由を知らない。ましてや佐久間と源田の負荷を少しでも軽減させる為に入ったなんて。エイリア達と戦ってるキャラバンのメンバーに相談したら負担をかけると思い、私は単独で行動することを選んだのだ。

「何か答えてくれ、苗字…!」

「…どうしてだろうね、よくわかんないや」

「ふざけるな!どれだけ心配したと思って…」

鬼道の怒声が響き渡る。怒られて当たり前のことをやったわけだから私に反論する権利はない。どうしようか、この試合。そう思考を巡らせた刹那、背後から肩に手を置かれた。ああ、忍ちゃんか。呼び出しがかかったから呼びに来たのだろうか。そろそろ始まる。

「鬼道、私は全力を出すよ。けれど何があっても全力を出してぶつかってきて。それが彼らを救う鍵になる」

「彼ら?まさかお前…!」

理解するのが早い鬼道はこの一言で理解してくれたようでよかった。早く終わってしまえばいいのに、こんな試合。こんな苦痛を味わうようなサッカーなんてやるのは初めてだ。私は笑いながら鬼道の横をすり抜けて告げる。

「もう少しだけ、さようなら」

この試合が終わったら真っ先に戻るから、だから待っててください。


一時的な遠回り

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