※闇墜ち円堂君につき注意


考えた事のなかった限界を確かに感じた。もっと力がなくちゃ勝てない。力も技術もすべてに置いて言える事だ。足りない、足りない、足りない…

「円…堂…?」

苗字の手から滑り落ちたグラスがガシャンと豪快な音を立てて砕け散った。苗字のほうへ目を向けて笑ってやるとお前は急に泣き出した。なぁ、なんで泣くんだよ。俺強くなって戻ってきたんだぜ?

近付いて涙を拭ってやろうとすれば拒まれて行き場をなくした右手。じんわりとした痛みを感じた。苗字はただ、怯えた目で体を震わせていた。

「どうして円堂、なんでエイリア石なんかに…」

「…力が欲しかったんだ。ゴールを絶対に守れる力が」

「変だよ円堂!誰よりもそんなやり方を拒絶していたのに、まっすぐだったのに!」

涙をぼろぼろ流して俺を拒む苗字を無理矢理抱き締めた。いつもなら抱き締め返してくれるのに今は離れようと必死に俺の胸を押して叩く。

「え…んど…助けて円堂、円堂…っ」

円堂、俺の名前。けどきっと呼んでいるのは俺じゃないんだろう。変わる以前の俺の事だ。

「なぁ苗字」

なら強くなった俺を見せれば認めてくれるのか?そんな浅はかな望みを持ってみる。わかってる、お前が今の俺を絶対に許してくれるわけないって。俺はボールを手にとっていつもと同じ言葉を呟いた。

「サッカーやろうぜ」

いつもの言葉を聞いた苗字の表情がとてつもなく悲しそうに見えた。そうしているうちにいつの間にか苗字の涙は止まっていたけれど。


浅はかな望み

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