ぎりぎりと、苗字さんの手首が軋むような音を立てるほどに強く掴んでいた。 そのまま引っ張って歩き出して、気付いた時には体育館倉庫の中に連れ込んで鍵を閉めていた。 高跳びの時に置いておくスポンジの詰め込まれたマットに苗字さんを放り投げる。 「しら、いし、く…」 恐怖からなのか苗字さんの声は弱々しく、か細い。 俺は何も言葉を発さずに苗字さんのネクタイを解いていく。これから何が始まるのかを理解した苗字さんは否定の言葉を何度も漏らした。 それを無視してするすると制服を乱していく。真っ白な肌は日焼けを知らないかのように綺麗やった。 「苗字さん」 「や、だ…白石くん、っ」 下ネタとかで顔真っ赤にしてまうくらいやから苗字さんはかなり純粋なんやろ。 そんな彼女の頬に手を滑らせる。びくりと身を縮ませるとこもかわええ。 耳元を舌先でなぞると、苗字さんが声をあげる。たとえ謙也でも、苗字さんは渡したくあらへん。 「なんで、こんなことするの…っ」 「……苗字さんは、謙也のこと好きなんやろ」 「どうして、そう思うの…?」 どうして。そんなんわかっとるクセに。 だから謙也にとられる前に俺は防衛線を張ろうとしたのだ。無理やりにでもと。 苛立ちがますます募っていく中で、苗字さんがぽろぽろと泣いているのに気付く。 しゃくりあげて、肩を震わせて、泣いていた。こうしてしまった全ての原因は俺。 「バカ、白石くんのバカぁ…私が忍足くんにずっと相談してたの、」 白石くんのことだったのに。 「苗字…さん」 「ずっとずっと、忍足くんに相談してたのに…っ、白石くんが、わたし」 言葉の続きは言わせたくはなかった。紡ぎ出される言葉を塞いだ。ひどく絡ませて、絡ませて。 「…好きや」 「バカ、…絶対許してなんかやらない」 泣きじゃくって目を真っ赤に腫らした苗字さんの顔が俺の首筋に埋まって、チクリと痛んだ。噛みつかれたと理解するのに時間はかからない。 「許さないから…ずっと好きでいてくれる?」 「……許さんでええよ」 |