ぱたぱたと誰かの足音が俺を追いかけてくる。とん、と軽く背中を叩かれた。
かなり急いでいたのか少し荒くなった息遣いが聞こえた。

足音の主が白石くん、と俺を呼ぶ。それだけのことなのにどきりと心臓が大きく鳴った。
苗字さんは隣のクラスで俺と一緒の委員会。それが俺と彼女の接点。
そこからよく話すようになって一緒に過ごすことが多くなった。一緒に過ごすことが多くなってから俺はいつしか苗字さんに惹かれてもうた。

「忍足くんは一緒じゃないの?」
「あぁ、謙也なら先生に呼び出されておらんよ」

少しだけ、胸の中がざわつき始め、俺の中に苛立ちが募る。

最近、苗字さんは謙也の事が好きなんじゃないかと思うようになっていた。
俺との接点を持つと同時に、必然的に仲のええ謙也も苗字さんと仲良くなっていった。
ここ1ヶ月の間、よく謙也と苗字さんが二人きりで話してるところを見かけるようになった。
第三者から見て、お似合いやなぁと思ってしまったのも事実だ。

苛立ちが募る。以前から積もっていたその苛立ちが収まり切らなくなりそうやった。

「忍足くんに、話したい事あったのになぁ」

少し困ったように笑う苗字さんとその言葉に俺の苛立ちはぷつりと溢れ出した。

謙也のものになってしまったら、俺はどうすればいいんだと。
苗字さんの隣で笑ってるのが謙也だったら、俺は心から祝う事が出来るのかと。

自問自答の末に行きついた答えに道理だとかはなかった。

誰かのものになる前に傷物にしてしまえばいい話だと思ったのだ。

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