ミナモシティに着いた私はコンテストのマスターランクに挑戦しに来た。エントリーまでにまだ時間が余っていたのでいつもどおり砂浜をぶらぶらする。 裸足で歩くと砂の感触が意外にも心地よくてほっとした。私が出るのは美しさを競う。パートナーはユキメノコ。 可愛くて綺麗なこの子は何度も何度も優勝してる。ある意味私もマスターランク常連なのだ。 ふと、海の向こう側から人影、というかポケモンの影が見えた。誰かが波乗りしてこちらへ向かってきてるのだろうか。(空を飛んだほうが速いのに) 見えてきたその影は見覚えのあるミロカロス。…まさか、あの人わざわざ波乗りで来たのか。 「ミクリさん!」 「やぁ、こんなところにいるってことはナマエちゃんもエントリーするのかい?」 そのまさかだった。今やコンテストマスターとまで呼ばれてしまっているミクリさん。ジム戦の時にそれはそれはお世話になりました。(だってあの氷のタイルで何度下へ落とされたことやら) 「ミクリさんもエントリーするんじゃ私勝ち目あるのかなぁ…」 「それはそれは。そう思ってもらえて光栄だよ、君だって常連だからファンがたくさんいるだろう?」 そんなバカな。民間人の私にそんなファンなんているか。マスターランクには数え切れないほど出てるけど。 今日も優勝狙っていこうと思ってたのにモチベーションが下がってしまった。ううむ、このままじゃいけない。ユキメノコも首を傾げて私を見てくる。その仕草にキュンとしてポロックケースから一粒ポロックを手渡した。 ポロックってどんな味するんだろうなんて不意に思って青いポロックをひと齧りするとミクリさんが声を上げた。 「うっ、しぶくてすっぱっ…!」 ポロックのきつい味に耐えようと一生懸命になっていると隣から聞こえる笑い声。それはまぁ、豪快に、あはははとミクリさんが笑っていた。 「さすがにポロックに齧りつく人は見たことがないよ…!」 ミクリさんの言葉を聞きながらも私は茫然としてしまう。この人はこんなに楽しそうに笑うんだ、いつもみたいに上品じゃなくって。それともこれが自然体なのかな、なんて思うと得した気分になる。ミクリさんが好きな私にとって、とてつもなく嬉しい事。 どうかしたの、と問いかけられて顔が真っ赤になっている私は何も考えられなくなる。何かが額に触れて離れた。ユキメノコが目を覆い隠してたのを見て状況を理解。あれ、今何が起こったの。 「面白いものを見せてくれたから、ね」 私は息をするのも忘れそうになるくらい、幸せを感じました。 例えそれが好意であろうとなかろうと。 |