「…な…んなの、あんた」

「君は実に面白い。興味がわいてきてしまうよ」

気味悪いという一言がぴったりであろう笑みを浮かべた目の前の相手は、そっと私のほうに一歩一歩足を進めてきた。どうしてだろう、足がすくんで、「ねぇ、」

間近に迫った顔。綺麗な新緑で薄く染め上げたような髪。深くかぶった帽子のせいでよく見えていなかった目は確かに光が存在していて私の目をとらえて離さない。行き場を失くした腕を掴まれてびくりと肩を揺らす。動け、どうして動かないの、私の足!「今、君にはトモダチの声が聞こえているかい?」耳元でクスリと笑った彼はそう呟いた。

パートナーのポカブが私の足を鼻先でつつく。その感覚で我に返った私は目の前にいる気味悪い人間を思い切り突き飛ばした。

「私は、あんたの考えには賛同できない!」

やっと動くようになった足を懸命に動かしてその場を後にする。「…ポカブ、君はなんて思ってたの?」ぽつりと呟くとどこか怒ったように鳴いたパートナーをぎゅっと抱きしめる。にんまりと笑った、あいつの顔が離れない。忘れろ、忘れろ。頬の熱さも、喉に詰まる言葉も全部。一瞬でも綺麗だと思ったり、気持ちが揺らいだりなんて信じたくはなかった。

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