ノボリさん、と能天気な声が車内に響き渡りました。私はサブウェイマスターですから車両を無敗で20両越えねば私に挑戦できません。まぁ彼女もよく来るものですね、もはや尊敬に値します。 へらりとした笑顔で最終車両に足を踏み入れたナマエは「相変わらずのポーカーフェイスですね、ノボリさん」と呟きつつ、パートナーであるバクフーンを繰り出しました。はてさて、私はポーカーフェイスなのでしょうか。 「クダリさんはいつもにこにこしてるのに、勿体ないですよ」 「それは褒め言葉と受け取ってもよろしいのでしょうか、」 「褒めているつもりですからそう受け取ってくださって構いませんよ」 とうに着慣れたロングコートをはためかせて深く被っていた帽子のつばを上げると、彼女が間近に迫って私の顔を覗いているではありませんか。目を丸くした彼女はまるで珍しいものを見るかのような目を私に向けています。 「どうかいたしましたか、ナマエ?」 「ふと思った事なんですけど、あまりノボリさんの素顔を間近で見た事なかったなと思いまして」 単なる興味本位ですから気になさらないでくださいね。そう言って離れて指定の位置に付いた彼女が少しだけ頬を真っ赤に染めていたのに私が気付く事はございませんでした。 (ノボリさんって顔整いすぎだと思います。…仏頂面、勿体ない) 彼女は何を思っていたのでしょうか。どなたか私に教えてくださいまし! |