「トレインが故障、ですか?」

なんともまぁ、珍しい事もあるものですね。何者かにデータを改ざんされてしまって今動かせば暴走列車ですか。
それでは今日の仕事はないということになります。

「ノ、ボリさん!」

「今日も来てくださったんですか、ナマエさん」

酷く慌てた様子を見せた彼女は出したままにしているサンダースとこちらへ駆け寄ってきました。
彼女はここへ毎日通っている常連であるから、勝負できないと知ったらどう思うのでしょう。
案の定、彼女は駅員から先に聞いていたのか私に真偽を問いかけてきた。

「今日トレイン動かせないって本当ですか!」

「ええ、今動かせば暴走列車になると」

そう言うと酷く落ち込んだ様子を見せて今日こそはノボリさんに勝とうと思ったのに、とぽつりと呟きました。
サブウェイマスターである私のところに来るまでは好調なのですが今まで彼女は一度も私に勝ったことはありません。
だからこそ常々こうして足を運んでいてくださるのでしょうが。(だからこそ、私は勝たなければならないのですけれど)

「すみませんが今日のところはおかえりくださいまし、復旧作業は今日中に終わると思いますので」

「そうですね、復旧作業で忙しいですもんね」

じゃあ今日は帰って特訓してきますから、そう言ってにこやかに笑うナマエさんはサンダースに声をかけてホームを駆け上がる。
「ノボリさん!」振り返り様に名前を呼ばれて彼女に目を向けると、彼女は小さく手を振っていた。

「また明日、よろしくおねがいしますね!」

「ええ、楽しみにしています」

階段を駆け上がる彼女を見て思う。彼女が私に勝ったら、彼女はギアステーションに来なくなってしまうのかもしれない。
ナマエさんとの唯一の接点。だからこそ、やはり負けられないのです。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -