折れてしまった右腕。あの時の出来事は現実で起こったのだという確かな証拠。

エスカバくんは一命を取り留めた。

私のせいで、生死を彷徨った。
私のせいで、彼を不幸にしてしまった。
私のせいで、エスカバくんはまだ目を覚ましていない。
私のせいで、彼の体は砕かれてしまった。

私のせいで。

私の犠牲は右手だけだった。
複雑に折れてしまってはいたけれども特に命に別条はないものだった。

エスカバくんは全身複雑骨折。出血多量。
生死を彷徨った結果、彼の生命力の高さが幸いしてか、一命を取り留めた。
大切な神経も傷つけてはいなかった。

けれども、それは結果論だ。
私があの時、ちゃんと避けていれば?
生きることをやめてしまいたいと願わなければ?
エスカバくんはこんなに傷つくことはなかった。
やっぱり私の存在は関わる人間を不幸に貶めてしまって。

エスカバくんは私を嫌いになっただろう。
それを知るのが苦しくて仕方がなくなった。

すやすやと眠るエスカバくんの表情はとても安らかで綺麗。
彼の眠るベッドの横で私はその寝顔を見ながら、泣いてしまった。

「ごめん、なさい…ごめんなさい、エスカバくん……」

彼とは距離を置くべきだ。そう思った。
私は走って病室を抜け出す。走って、走って。

彼にどんな顔をして接すればいいか分からなくて、逃げるんだ。
結局私は弱いまま。

「……バカ、だろ…」

嘲笑するかのような呟きは、逃げてしまった私には届かない。


離別