Please say to me

あのさ、と自分の名を呼ばれた。
ばしゃばしゃとかぶっていた水道の水がひやりと頬を伝って流れる。
暑さにやられてしまいそうな快晴で光が反射していた。
真っ青な、雲ひとつない空と同じ色が私を見据えるのを確かめて、からからに乾いてしまった喉から声を出す。

「どうしたの、一郎太」
「今日の練習、二人でペアを組まないか?」

タオルを投げつけられながらのお誘いに私は顔を拭いながら戸惑った。
そう言えば昨日、宮坂から誘われたような気がする。
曖昧な記憶が確かになって、申し訳ない事をしてしまうけれどと返事を返す。

「ん、ごめん。宮坂に昨日誘われてたんだ」
「…だろうと思った。お前はいっつもあいつと組んでるもんな」
「宮坂に誘われちゃうと断れなくって」
「たまには後輩ばっかりじゃなくても…」
「そだね、断ろうかな」

一郎太の言葉をさえぎるように声を出せば、びっくりとしたのか片方しか見えていない目を丸くして私を見る。

「一郎太の言うとおり、たまには一郎太と走ってみたい」
「っ、お前なぁ…」

私の右手にあるタオルを不意に取り上げられて、顔にごしごしとこすりつけられる。
痛いと声を上げても止まらない手。
小さな声で「ずるい」と言われたような、気がした。

―――
「二人でペアを組まないか?」「後輩ばっかりじゃなくても…」と言われたい


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