Please say to me

今やサッカー部に馴染んでしまった風丸。グラウンドを目にすれば走るのと共に揺れる深い空みたいな髪の毛。クセのない綺麗なそれが揺れるのを今まで追いかけていたけれど、今は立つグラウンドが違っているんだ。

時刻は間もなく午後5時を迎えるところ。沈みかけた太陽の光だけが陸上部の使用しているフィールドを明るくしていた。眩しさに目を細めると今まで追い続けた青が、こちらを見ていた。

「少し一緒に走らないか?」

「別に構わない、けど?」

それならよかった、とでも言うように笑う風丸。涼しげなその表情が何故か憎たらしくて仕方がなく思えた。
追い続けたものがなくなってしまったら、私はどうしたらいい?
そう最初は思ったけれど今は違う。フィールドが違くても私が追い求めるのは彼を超える事。

フィールドのレーンに並んで体勢を整える。タイマーのブザーが響くのと共にスタート。横を並んで走り抜ける。少しずつ、少しずつ。縮まる距離がまた広くなる。
ゴールのラインを踏んだのは私が先だった。息を切らしているけれど嬉しくてたまらないのだ、私は。

「勝て、た…」

「は…っ、速くなったな、名前」

息を切らす風丸の声が耳に届いて実感。越える事ができたんだと。風丸のほうに振り返れば接近する顔、距離。酸素不足の口内が荒らされた。

「覚えてろよ、」

次は負けないから。そう言われたのはいいものの、果たして私にこの勝負のメリットがあったのかは深く考えない事にした。

―――
「少し一緒に走らないか?」「覚えてろよ」と言われたい


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -