Please say to me

ちやほや、そんな効果音がぴったりであろう今の状況を私は遠目に見ていた。
ぎりりと食いしばる歯が鈍い音を立てていくのを耳にしたのか、次郎が私の様子を見ていた。

「またか、お前……」

「……私の我儘、だよね。分かってるんだけど、それでも」

特別私が彼の何かというわけでもなく。ただの幼馴染で親友であるというだけのこと。分かってる。ずっと昔から理解してた現実だもの。
それでも、幸次郎と先に約束したのは私のほうだったんだもの。

何事もなかったかのように表情を戻して幸次郎の横を過ぎ去る。「先に帰るから」と一言素っ気なく残して。
数分歩けば既に姿は見えなくなって、追いかけてくれるだろうとちょっとだけ期待してる自分だけがいる。……バカみたいだ。もう一度前を向いて歩こうとすればそれを止めるのは声だった。

「待ってくれ、やっぱり俺が悪かった!」

「…っ、何のこと!さっきの女の子たちはどうしたのよ!」

「名前、」

腕を引かれる。私は意地になって振り返らない。いっそのこと嫌いになってくれとまで思うほど、好きなのに。

「新しい関係を作らないか?」

「は、…何、言ってんの……?どういう、」

「だから、その、幼馴染でも親友でもなくて、もっと違うものだ」

振り返りはしなかった。けれど幸次郎の言葉だけはやけに熱がこもっているように聞こえて耳にこびりつく。

「彼女に、なってくれ」

―――
「待ってくれ、やっぱり俺が悪かった!」「新しい関係を作らないか?」と言われたい


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