Please say to me

風を切る音、一瞬だけ吐かれる息、微かに漏れる声。
拳という名の切っ先が、脚という名の凶器が互いに攻め合い、交錯する。
鈍い音と痛みを伴いながらもなお立つのは自分が軍人の端くれであるからだ。
そして目の前にいる人物もまた同じ。

「相変わらずだよね、何処にそんな力があるの?華奢なのに。」
「……私語は慎みなよ、ミストレ。あなただって随分華奢じゃない」

唾を吐くかのように挑発的な言葉を述べる。
挑発ともとれるこの言葉は事実でもある。実際、ミストレは華奢だ。
「余裕そうだね」「そっちこそ」その一言の交わし合いを皮切りに飛びかかる。
その一発が決定打となり、私とミストレは同時に膝を折った。

「…っ、は……結局また互角…?」
「いつになっても、決着つかないよね、オレ達って…さ」

息を切らしてそのまま倒れ込む。地面の固い感触がやけに心地よく感じた。
なかなか整わない息が闘技場の中に響く。
ミストレは起き上がったと思うと寝そべる私に微笑した。
その表情に一瞬で心を奪われそうになる。卑怯だ。

「ねぇ、こんな状況だけど言ってもいいかな?」
「何、かしこまっちゃって」

気だるい上半身だけを起こして、私は微笑んだままのミストレを見た。
ミストレの唇がひとつずつ噛み締めるかのように言葉を紡ぐ。

「君の事が好きなんだ。オレと付き合ってくれないかな?」

は、と間の抜けた声しか出せないのは当たり前のことだと思って欲しい。
「何も言わないのは肯定の意味?」涼しげに笑いながら言うミストレ。
私は何も言わず、ミストレの頭を"ぐー"で殴って一言。

「承諾の一発ね」

確信する為に感触を確かめたという事にしておこう。とりあえず殴りたくなったのだ。
「素直じゃないな。」ミストレの一言がやけに耳に残った。

―――
ミストレに「君の事が好きなんだ。オレと付き合ってくれないかな?」と言われたい


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