Please say to me |
私の声は掠れていたことだろう。 何を言わずしても私の目からはぼろぼろと溢れ出すばかりだった。 泣かないなんて志は呆気なく、無意味。 「いち、のせ…っ」 「やだなぁ、名前。…泣かないでよ」 泣かないでなんて到底無理な相談だ。 一之瀬は優しいから、心配かけたくないって黙っていたんだろう。 確かに話してくれなかった事はちょっと悲しいけれど。 それよりも不安なのは成功率の低くなった手術の事だった。 もし成功しなかったとしたら一之瀬はもう、サッカーが。 そんなことはただの言い訳や誤魔化しにすぎない。 …私が心配なのは、これからもこうして隣にいられるかどうか。 一之瀬が秋を好いているのも分かってる。 「…俺さ、やっと自分の気持ち、はっきりさせられた」 「一之瀬の気持ち…?」 にこりと微笑みながら、彼は言葉を続ける。その光景に私は息を飲んだ。 「俺は、どんな事があっても名前のとこに、戻ってくるよ」 「一之瀬、それってどういう意味、」 「……内緒」 その言葉の意図ははっきりとはしなかった。 何故と問いかけるのを遮るように、彼は手術室へと入っていく。 その姿を目で追いながら、よりどころのない気持ちの意味を探るので精一杯だった。 ――― 一之瀬に「俺は、どんな事があっても名前のとこに、戻ってくるよ」と言われたい |