Please say to me

「好きだ」

いつになくまっすぐに私を見据えるその目に言葉を発することは許されなかった。
バカじゃないの、といつもなら笑って誤魔化すことだってできるはずだ。
何言ってんの、といつもなら悪態つけるはずだ。
それが出来ないのは風丸の作ったこの笑いを許さない、妙に緊張の張り詰めた空気のせいだ。

「…嘘、だぁ」

ようやく私の口から出た言葉は呆気に取られているような間抜けた声。
信じられない。いや、信じられるはずがない。
だって今まで随分と私は風丸の前で、風丸と一緒にバカやってきた。
小学校からの付き合いとは言えど、すごくその、女らしくない事をやってきた。
それが今になって何故。

「だって風丸、私は君の前で随分とバカらしい事やってきたんだよ?分かってるでしょ?」
「分かってるに決まってるだろ。ずっと一緒だったんだから」
「じゃ、じゃあなんで?風丸、かわいい子にいっぱい告白されてるじゃん」
「好きなんて嘘言わない」

そして再び、私は何も言葉を発せなくなった。
この空気にどう対応すべきか、私には見当もつかないのだ。

「昔からお前に振り向いて欲しくて頑張ってたのにな」

呟くような声ははっきりと私の耳に届いて、頬が熱くなっていく。
私もずっと前から彼が好きだったという事だ。

―――
風丸に「好きなんて嘘言わない」と言われたい


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