Please say to me

鬼道有人が、雷門へと転校してきた。
確かに彼のゲームメイクによって勝利へは導かれた。
けれど私は納得いかなくて、心底いらついていたのだ。

だからこそ、言葉よりも先に拳を振るってしまったのだと思う。
二人きりになってしまった控室。既に他のみんなは帰る準備を済ませただろう。
私の拳は鬼道有人の頬へと直撃。
女の力ではあるものの、微弱でも痛いものは痛いだろう。
それでもなお私は止まらず、鬼道有人の襟首を掴んでいた。

「私は認めない。あんたの事情がなんだろうと知ったこっちゃないわ。
 あんたがやってきたことを忘れたわけじゃない!」
「…すまないことをしたと思っている。だが俺も引き下がれないんでな」

鬼道はまるでこうなるだろうと分かっていたかのように冷静で、それが余計に私の癪に触れた。

「っ、だったら雷門に尽くすって誓え!
 そうしたら、…そうしたらあんたを対等に見られる、はずだから」
「……もちろん、そのつもりで俺はここに来た。
 苗字、お前に約束する。俺はここにいる以上、雷門に尽くす」

鬼道の口から出たその言葉で少しずつ落ち着きを取り戻した私は掴んだままの襟首を離した。
そのまま右手を殴ってしまった頬へと滑らせる。

「…ごめん、最低なことした…」

私が謝罪の言葉を述べると、ふっと、笑い声が耳に届いた。
顔を上げればそこには笑っている鬼道の顔。ゴーグル越しに、赤い目が見えた。

「お前、面白い奴だな…」

不覚にもその笑顔に感情が揺らいだと気付くのは、遅くなかった。

―――
鬼道に「お前、面白い奴だな…」と言われたい


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