Please say to me

「フィ、ディオなんか、嫌い、よ!」

そう一言だけ吐きだした私は履いていたパンプスを脱いで彼に投げつけた。
べしんという大して痛くもなさそうな音を立てて彼に当たったパンプスは地面に転がり落ちる。
我ながら最悪だと、行動してから我に返る。
目元は真っ赤に腫れ上がってぼろぼろ。喉から出る声は掠れてカラカラ。

「…別れ、ようよ、もう私、ダメだ」

それはそれはとてつもなく惨めに見えて、自分が馬鹿らしく思えてきて何も言えない。

そもそもこの原因を作ったのは私だ。
勝手に嫉妬したのも、私だ。怒ったのも、泣きじゃくり始めたのも私だ。
別れ話切り出してるのも私だ。
泣けばいいってもんじゃないだろと思って私は自分の行動に自己嫌悪する。
「…ごめん、なさい」その場にうずくまって自分の口から出した言葉は彼に届くだろうか。

「嫉妬、してくれたんだろ?」
「…ごめんね、わがままばっかで」
「君だけしか見てないから、そばにいて」

泣きじゃくってばかりの私の手を引いて、そっと頭を撫でられる。
抱き寄せられる。笑顔を見せられる。

「だから、別れるだなんて言わないでくれ」

その言葉に私はまた涙する。

「やっぱり私、フィディオじゃなきゃ、ダメみたい」

―――
フィディオに「君だけしか見てないから、そばにいて」「別れるだなんて言わないでくれ」と言われたい


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