Please say to me

合同練習、と言えるほどでもないが普段は各学年で練習をしているところ、今日は他学年とペアを組んでみようかという話が出た。
普段は風丸と走り込んでいる私は下級生の面倒なんてあんまり見ているわけもなく、先輩方は一年生の指導に当たっている。
どうしようと思っていれば、風丸は既に後輩の女子生徒に連行されていった。

「…ご苦労なこった」

ぽつりと呟いた言葉は哀れみか、皮肉。
モテておりますなー風丸君は。そんなこんなで私は辺りを見渡してペアになれそうな人を探した。

困った。実に困った。
誰もいない。ペアになってくれそうな子が見当たらない。
深く溜息をついてみれば「名前先輩!」と大きな声で呼ばれた。
男子生徒の子がこちらへ近寄ってくる。ペアになってくれないかというお誘い。

「あ、本当に?じゃあ喜ん…――」

言いかけた言葉が遮られるように腕を引かれた。
ちょっとよろけるけど転びはしない。腕を引いていたのは宮坂だった。
「先輩はこっちです!」そう言った宮坂はぐいぐいと私を引いて歩いていく。
ごめんねと残された男子に呟いて私は前を向いた。

「宮坂、ちょっと…」
「一緒にトラックを走るのは俺ですよ!」
「へっ?」

呆気に取られて呆然とすると、宮坂が真剣な眼差しを私に向ける。
何、私なんか変なことしちゃったのかしら。
そんな憶測とは的外れな言葉が零れ落ちた。

「ずっと、風丸さんと一緒にいる名前先輩見て、我慢してたんですよ」

何ともいえぬ甘酸っぱい感情に、思考回路が、ぶちりと切れた。

―――
宮坂に「一緒にトラックを走るのは俺ですよ!」と言われたい


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