Please say to me

ふわりと舞うのは綺麗でさらさらな髪の毛。綺麗だなぁと、ランニングしながらそう思った。
綺麗に整ったその髪の持ち主は学生服を着ながらじっとフィールドを見据える。
何処となくあどけなさの残る感じと、馴染みのない空気。
もしかしたらこの間入学した一年生の子だろうか。
もし陸上部に入部したいと思っているなら声をかけるべきだろうか。

「あの、すみません!」

フィールドを見据えていた本人の声が私の耳に届いて振り返ると、彼は私に近寄ってくる。
走る足を止めて息を整える。深く深呼吸してから私は一言、「陸上に興味があるの?」とお決まりのようなセリフを吐いた。

「この間入学してきたばかりで、陸上やりたくて…」
「体験入部希望って事でもいいかな?えっと、名前は?」
「宮坂了です。あの、俺…」

口ごもる彼は何かを言いたそうな顔をしている。
私は宮坂くんが次の言葉を発するまでじっくりと待った。

「先輩に憧れてこの中学に入りました!」
「わ、私に、憧れてって…?」
「すごく楽しそうに走ってる先輩を見て、俺もそうなりたいなって…だから、その」

俺も見てください、他の部員だけじゃなくて、あなたに近付けているかどうか。

宮坂くんにそう言われた私は何も言葉を口にできなくて、心拍数がどんどん上がるのだけを確かに感じていた。

―――
宮坂に「先輩に憧れてこの中学に入りました!」と言われたい


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